美白化粧品開発の裏技の話


化粧品業界ではちょいとタブーの部類に入るのですが、実はこのあたりのことを知らない化粧品開発担当、というかマーケティングとか企画の担当者が増えつつある昨今なので、そういう人も見ててくれたらいいな~と思って書きます。

「美白の化粧品の発売時期は秋」という話です。

すみません、美白のメカニズムとか、これこれの成分が効くよ~みたいな話じゃなくて。

この辺りは、小出しにおいおい話していきます。

さて、美白化粧品は秋に発売するべき製品です。なぜなら、ほっといても白くなるから。

逆に、春に発売すると、どうしても紫外線量が増えるので、一生懸命塗っているのに、むしろシミが濃くなった、色が黒くなった、などのトラブル報告を受ける羽目になります。

それは、日焼けしているのですよ。と、私が聞かれたら即答しますけどね。

昔、資生堂がアルブチンの許認可を取るときに行った、すごい実験では100人以上(論文が探し出せないので、検証できないのですが、もっと多かった記憶あり)に美白の化粧品を使用させ、約1年半追いかけたレポートがあります。

それによると、使い続けることで、春から夏にかけては肌の色が濃くなるが、その濃くなり方が、使用前よりは薄かった、とのこと。
波があるけど、その波が白いほうへシフトしていたという結果だったのです。

つまり、美白化粧品を塗っていても、やっぱり春から夏は黒くなるんだよと。

なので、賢いメーカーは、夏に浴びた紫外線を、秋にリセット!とかいう名目で、秋に発売するのです。
春先に発売するメーカーは、よほど自信があるか、皮膚生理を知らないということになりますね。

ここからが本題なのですが、化粧品の開発の仕事をしていると、いい化粧品はどれですか?とよく聞かれます。
肌はまちまち、好みの感触もまちまち、求めることもまちまちなので、これにはまったく回答できません。
でも、買ってはいけないものの判断はできます

もちろん、開発をやっている私達は、ある程度以上成分や処方組の特長を知っているので、全成分を見て判断するということになるのですが、それ以外にも判断基準があります。

それは、商品説明とその打ち出し方が「賢い」かどうか。

私なら、まず2月に発売する美白の化粧品は信用しません。既存品のリニューアルとかなら、100歩くらい譲るとしても、新製品の戦略商品を出すのは、論外。

また、製品の説明に整合性が無かったり、論理性が無かったりするものも信用しません。
割とよくあるのは「防腐剤フリー」。これには2種類あって、本当に防腐剤が入っていないものと、入っているけど「防腐剤」とうたっていないもの、とがあります。

以前、むりやり防腐剤フリーにした化粧品で、「エタノール(保湿剤)」と記載されているものがありました。
エタノール防腐(これは、カビなどに無防備なので、プロの開発者は採用しません)で対応していたという処方でした。
BGも多めに入っていて、これでも対応していたようですが。
誰が見ても、エタノールが保湿剤でないことは明らか。
こういうみえみえのことをするメーカーは信用しない方が良いでしょう。

ちなみに、こういうことはあまり言いたくないのだけど、美白成分のビタミンC誘導体にも、かなりの誤解があるようで、研究開発レベルが持っている知識と、企画担当レベルの知識でも相当な差があり、ましてや一般消費者の中の詳しい人では、すでに誤解の塊みたいになっているケースが多いよう。

以前にもお話ししたように、ビタミンC誘導体には様々な種類があり、それぞれに特徴がありますが、部外品の主剤(有効成分)になっているものなら、効果はあります。

ビタミンC誘導体「アスコルビン酸2グルコシド」のこと

美白の話をするときに、ちょろっとだけ話を出して、結局あまり細かい説明をしなかったのが、このアスコルビン酸2グルコシドという成分の話でした。 業界内ではAA2Gという…

ただし、それぞれの処方系によって、安定性、有効性は異なるので、処方の作り方というのが大変難しいことが現実。
一般に安全と言われるビタミンCですが、結構刺激があり、高濃度配合ではラジカル的な状態になって、皮膚老化へつながるケースも指摘されています。

何事もほどほどってことですね。

以前にも申し上げたように、私自身はアスコルビン酸グルコシドという成分が比較的気に入っています。
長期使用としては有用性が高く、皮膚刺激が少ないので。
水溶性なので、皮膚への吸収が少ないのが難点ですが、その辺は乳化技術でカバーして、真皮まで到達させられると、コラーゲン生成を促進させるという機能まであります。

油溶性ビタミンC誘導体のVCIP(テトラヘキシルデカン酸アスコルビル)もよい成分で、油になじみやすいので肌に浸透しやすく、分解が早いので効果が出やすいとされていますが、表皮内での分解速度が速すぎて、部分的に高濃度になりやすいとか、表皮内ですべて分解されるので、真皮までたどり着かないという指摘があります(こういう情報は表に出ない)。

割と昔からある原料ではアスコルビン酸マグネシウムという原料と(実際にはもっと名前が長いです)、同ナトリウムがありますが、後者は効果は出やすいが水溶液中で不安定で、保存がきかないことが知られていて、皮膚科などの用事調整用になっているようです。


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