石鹸の秘密について技術者目線で語ってみる【2】
石鹸について、というか脂肪酸石鹸について、さらっと箇条書きにでもしようかと思って書き始めたら、相変わらずの脱線続きで、さっぱり進まなかった前回。
石鹸については、なんだかんだと10年以上付き合っているので、色々小ネタが多いのです。もう、全然書ききれない・・・。
また脱線する前に、脂肪酸石鹸のメリットについて、いくつか述べて見たいと思います。
そういえば、前回、肌がアルカリ性に傾きやすい人、というお話をしていますが、腎臓透析をやっている人は、肌がアルカリ側に傾いているという話があります。
同様に、アトピー肌で肌の痒みが強い人も同様という話があります。
腎臓透析の方は、肌が乾燥しやすい上に、痒みが出やすいというのがあるそうですが、これは、肌がアルカリだからという説があります。なので、アルカリ性はよくないよと。
実はこれには続きがあって、肌がアルカリに傾くのには、汗の成分などに若干アルカリ寄りの成分がある割に、これを中和して肌を弱酸性に保つべき、皮脂が出ないので、アルカリになっているのだ、という話があります。
もっとも、pH9とかになってるわけではないので、それをアルカリ寄りと言っていいのかは疑問ですが。
そのうちお話ししますが、クリームの中には「けん化入荷」という手法で作られたものがあり、この「けん」は「せっけん」の「けん」なのですが、この種のクリームはアルカリ性になります。
ですので、上記の肌質の方には、合わないと思われます。
ところが世の中には、「敏感肌の方のための、合成界面活性剤を不使用のクリーム」と言った売り文句があったりするので、注意が必要なわけです。
石鹸のメリットにはいくつかあります。洗浄力が比較的高いというのもその一つ。
また、脂肪酸の種類にもよりますが、泡立ちがよく、泡の質が良いものを作りやすいというのも特徴かなと思います。
しかし、石鹸の最大の特徴は、いわゆる「石鹸カス」を形成するという部分だと、私は思うのです。
ということで、この「石鹸カス」について少し。
石鹸をはじめとする洗浄成分は、界面活性剤の一種です。界面活性剤とは、2つの、通常では混ざり合わない物質を混ぜ合わせるもの、ということなのですが、まあ、通常は水と油を混ぜ合わせるもの、という認識ですね。正確ではありませんが、間違ってはいない、といったところです。
この辺りのことは、日本石鹸洗剤工業会のウェブサイトにわかりやすい説明があります。
https://jsda.org/w/03_shiki/a_kaimen02.html
以下抜粋です。
どうやって、水と油をまぜあわせる?
水と油のように、似ていない物質はそのままではまざりません。ところが、界面活性剤を入れると、水と油の境目(界面)に働いて、水と油を仲良くさせます。
お互いの反発しあう力が弱まるので、水と油がまざるようになるのです。
どんなかたちをしている?
界面活性剤は、ひとつの分子の中に、油となじみやすい部分(親油基)と水になじみやすい部分(親水基)の両方をもっています。
そのため、親油基は汚れや衣類と結びつき、親水基は水と結びついて、汚れや繊維のすき間に水がしみ込み、汚れを水の中へ取り出すことができるのです。
分子構造
このマッチ棒みたいな図は、中学校くらいの化学の教科書にも出てきます。
ここから、化学の教科書みたいになりますが、化学式で書いた場合、脂肪酸石鹸はCH3ーCH2ー・・・CH2ーCOONaみたいな形になっています。
このCH3のつながっているところが親油基といって、油に馴染みやすい部分。-COONaの部分が、親水基という水に馴染みやすい部分。
このようにして、石鹸は、水と油を混ぜています。
さて、それでは石鹸カスはどんな構造をしているでしょう?
CH3-CH2-・・-COO-Ca-OOC-・・-CH2-CH3
みたいな形をした構造をしているのが、いわゆる石鹸カスです。
化学式に馴染みがないと、ここらへんで即効拒否反応が出るのですが、もうちょいお付き合いください。
中学校か高校で、「結合の手」という言い方で習ったことはないでしょうか(何十年も前なんで、最近は変わっているかも・・)。炭素は4つ、酸素は2つの結合の手を持っているので、二酸化炭素はO=C=Oのように表されます、みたいな説明があったかと思います。
このブログは化学の講義ではないので、この辺はさらっと無視しますが、重要なのは、ナトリウムは結合の手を1つしか持っていないのに対し、カルシウムは2つ持っているという点。そのため、脂肪酸石鹸が、水の中に含まれるカルシウムと結合すると、上記のような構造になるのです。
この構造になると、石鹸は水に溶けなくなります。
なぜか?
その辺の話から、なんで石鹸カスが重要なのか、について、次回は(脱線せずに)語らせていただきたいと思います。
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