乾燥肌を4タイプに分類してみる(後編)
乾燥肌について、大雑把に、ざっくり説明するはずが、持ち前の理系気質と持ちネタの多さのために、「4タイプに分類して、それぞれどれに当てはまるかで対策のアドバイスを分けるようにしています。」と言いながら、半分しか説明できず、ましてや対策とか全然書けなかった前回。
ちなみに、乾燥肌の4つのタイプというのは
①皮脂分泌が少ない
②皮膚内の保湿因子を作る能力が低い
③皮膚もしくは角質層が薄い
④角質が厚すぎる
という感じ。
と偉そうに言ってますが、私が勝手に分類しているだけで、皮膚科学会公認とかではないので、その点はご容赦ください。
前回は最初の2タイプについて説明しています。
比較的一般的な乾燥肌はこの2つのどちらかだと思うのですが、実は、皮膚の保湿機能に問題が無いにもかかわらず、皮膚の構造として乾燥肌になってしまうケースが2パターン存在します。
あくまで私見ですが、この2つのパターンは無視されているように思うのです。結構悩んでいる人は多いと思うのですけどねえ。
一つ目は「③皮膚もしくは角質層が薄い」というケース。
子供の肌は乾燥しやすく、また大人より皮膚刺激を受けやすいのですが、これは皮膚の構造が未発達のため、皮膚そのものが薄く、そのため刺激を受けやすいからとされています。
皮膚の厚さは細胞の層構造によって決まり、細胞何個分の厚み、といった実数で表すことが可能ですが、これが薄い人が結構います。
私の経験上、色白で、キメの細かい肌の人には、このタイプが比較的多いように思います。
いわゆる東北の方に多い、美人の肌ですね。乾燥しやすく、刺激を受けて、赤くなりやすい肌質の方が多いように思います。
また、これも私の個人的統計ですが、子供の頃にアトピー性皮膚炎を経験している人で、大人になって治った、という人の肌は、ほとんどこのタイプに相当していました。
そういえば、アトピー性皮膚炎の特徴の一つに異常角化というのがあって、皮膚細胞の新陳代謝が早すぎて、成熟前の細胞が角質層になってしまうという現象があるそうです。
これは実際にはアトピー性皮膚炎に特有の症状ではなく、多くの人に生じる現象らしく、これについては資生堂の研究が非常に進んでいて、論文もたくさん出ていますが、商品としては生かし切れていなかった感じがあります。
異常角化が生じると、皮膚は必要以上に薄くなる上、角質層が未成熟なのでラメラ構造が不十分となり、本来は角質層として機能すべき角質細胞が、垢となって剥がれ落ちてしまうという現象が生じる場合があります。
この場合も、皮膚が粉を吹いたような状態になることが知られています。
皮膚の薄い肌は、皮膚トラブルが生じやすいこともありますが、もう一つ困った点があります。乾燥しやすいことと、おそらく炎症を生じやすいせいが考えられますが、小じわなどを生じやすく、ある年齢を境に、シワの目立つ肌になってしまうことが多いようなのです。
といって、ビタミンAなど、刺激の強いアンチエイジング化粧品は、てきめん刺激を感じてしまうという。なかなか対策の打ちにくい、困った肌ともいえます。
とはいえ、色白でキメが細かく、陶器のような肌の持ち主なのにもかかわらず、全く乾燥肌でなく、ましてやシワも生じにくいという、上記のパターンに当てはまらない奇跡みたいな肌の人も、稀にいます。
私が知る限りでは、2人くらいいました。実際お会いして話を聞いて、その頑丈ぶり、無頓着ぶりと、肌の美しさのギャップに驚いたことがあります。
とまあ、安定の脱線をしたところで、最後の、一見すると③とは真逆のように見える理由で乾燥する「④角質が厚すぎる」というケースについて。これは年齢肌と日焼け肌によく見られるケースです。
年齢を経た肌の特徴の一つに角質肥厚という現象が見られます。
古くなった角質は、本来は垢となって剥がれ落ち、新しい細胞と入れ替わります。ところが、この新陳代謝のメカニズムが上手く機能しなくなると、角質がどんどん溜まって、分厚くなってしまいます。
高年齢の肌の特徴の一つに、肌の「ごわつき」や「くすみ」がありますが、これはまさにこの「角質肥厚」が原因の一つとなっています。
角質層というのは、角質細胞の隙間を、セラミド+NMF+水がラメラ層を形成したものが埋めたような状態をイメージしていただければよいかと思います。
レンガをコンクリートで埋めてる感じですね。
ところが、この角質層が厚くなりすぎると、この隙間を埋めるセラミドなどが不足してしまいます。その結果、角質層の最外層は、保湿成分が不足して、「スカスカ」の状態になっています。
本来は、こうなった角質層は、垢となって剥がれ落ちて行くのですが、加齢やその他の原因があると、本来剥がれ落ちるべき角質層が残ってしまいます。
ここに、外部の刺激物質が入り込んだり、場合によっては細菌などが入って繁殖するというケースがあります。
加齢による角質肥厚は新陳代謝能力の衰えや、角質剥離のメカニズムの能力低下といったことで生じるものですが、若い人でも日焼けをしすぎると同様の状態になります。
日焼けによる肌のダメージを防ぐために、肌が角質を厚くして対抗しようとするためです。
特に日焼けによる角質肥厚は、過度の日焼けから数日置いてスタートしますが、その対応は早く、数日で肌がゴワゴワしたり、乾燥したりといった現象が生じます。
日焼けの後に「皮が剥ける」という現象を経験されている方も多いかと思いますが、これがまさに、日焼けからの防御のために皮膚の厚みを増加させるという反応が急激に生じた結果。
剥がれ落ちる皮膚の中に、酸化された細胞や最終糖化物質を入れて、廃棄しているのだ、という仮説もあります。
また、角質が厚くなりすぎると肌が痒くなるものですが、これも古い角質を削り取るように体が仕向けているのだ、という説明をされる人もいます(この説は、ちょっと支持が低いです)。
皮膚科学会には「漁師皮膚」という言葉もあります。
年配の漁師さんの首の後ろの皮膚が、言い方は悪いですが、象の皮膚のように、厚く硬くなっている状態をよく見かける、ということからついた名前だそうですが、これなどは、長年の日焼けによって、その部分の皮膚が厚くなっているためと説明されています。
日焼けは、ほんと色々引き起こす困ったものです。
さて、長々と説明してきましたが、一口に「乾燥肌」といっても、このように様々なパターンが存在していて、当然ですが、その対策も異なります。
それぞれのケースで、やるべきことと、避けなければいけない事をきちんとご説明しようと思ったのですが、その前に、その乾燥肌が、前述の4つのどれに相当するのか、もしくはどれとどれの組み合わせなのか、それを見分ける方法を次回ご紹介したいと思います。
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