化粧品に配合するアルコール(エタノール)のメリットとデメリットのこと(1)


化粧品の成分の中には、結構いい仕事するのに、嫌われてる成分があるなあ、と時々思います。

代表はパラベンとかの防腐剤ですが、アルコールもかなりの頻度で槍玉に上がります。

敏感肌用と銘打った製品では本当に嫌われていて、「無香料、無着色、アルコールフリー」は結構定番。一方で、皮膚科レベルになると香料・着色料はないに越したことはないが、アルコールはあってもいいんじゃないかという話も出ます。

実際、敏感肌用ブランドの代表的な、皮膚科での採用も多いNOVでは、ニキビケア用のAVアクティブラインではエタノールの入った製品が存在します。

まあ、処方的に、このラインはかなりアグレッシブなようで、必ずしも敏感肌を意識していないように思えますが(なんせ、サリチル酸とかレチノールとか入っているし)。

それはさておき、
確かにアルコールには、反応してしまう人がいるのは事実です。私の知り合いにも、アルコールがちょっとでも入っているとNGで、すぐ肌が痒くなってしまうという、アルコール過敏かつアレルギーの疑いありな人がいます。

その人は全くお酒が飲めない人で、ビールを一口で心臓がばくばくするといった感じの方。

アルコール分解能力がほとんどないに近い体質の人です。極端にお酒に弱い人には、このケースは多いと聞きます。

ちなみに、アルコールと言ったりエタノールと言ったりするので、ここではアルコールに統一していますが、化粧品で実際に入っているのはエタノールです。

ここからちょっとだけ化学のお話を。
化学の世界では、その物質に「アルコール」と名がついていると、その化学構造の中に「-OH(水酸基と言います)」が付いていることを示しています。この場合、それらは全て「○○アルコール」という総称になります。

エタノールというのは、「エチルアルコール」の別名、というか略称であり、これは「エチル」に「OH」がくっついた構造をしている、ということを表しています。

ハンドクリームやヘアトリートメントなどで「ステアリルアルコール」という成分を見たことがあるかと思いますが、これは先の「エチル」部分が「ステアリル」になっているという違い。

エタノールは、言わずと知れたお酒の成分であり、消毒用アルコールなどの主成分ですが、ステアリルアルコールはロウソクのロウみたいな外観の成分で、固体です。

とまあ、この辺のネタも山ほどあり、細かく説明したいところなのですが、今は化学の講義は終わりにして、本題の「アルコール」について。

そもそも、なぜアルコールを化粧品に入れるのか?

それはもちろん、入れる理由があるからです。

アルコールを処方に入れると、さまざなメリットがあります。ざっと挙げると

・乳化剤的な用途
・防腐剤としての効果
・清涼感を与える
・さらっとした感触を作る処方を作る
・揮発性成分として使用
・状態変化する処方を作る
・透明石鹸を製造する際に使用
・成分の肌への浸透を高める

などなど。
まだあったと思いますが、とりあえずこのくらいで。

多分、半分以上は一般には知られていないことなんじゃないかと思います。

例えば、乳化剤的な使用方法。
水とアルコールを混ぜることで、普通では水に溶けない成分を溶かすことができるようになることがあります。

さすがに水と油を溶かすとかは無理ですが、一部の有効成分(感酵素とか、パラベンの一部とか)には、アルコールが少し入っていないと溶けないものがあります。

アルコールの防腐効果も比較的よく使用される目的の一つ。

防腐剤を使用していないよ、という売り文句で作られた化粧品で、アルコールを防腐剤がわりに使う処方は稀に見られます。

多分、企画段階では「パラベンフリー」とかだったのが、伝言ゲームでおかしなことになって「防腐剤フリー処方」になったものだと思いますが、このああたりは景品表示法的には、限りなくブラックだと思うのですけどねえ。

その他の用途では、感触調整という目的があります。

例えば、揮発するときに「すっとする」ということから、清涼感を求める処方、例えばボディスプレーや夏場のボディローションなどによく使用されています。

アフターシェーブローションなども、以前は多く入っていました。

最近では日焼け止めの基剤として使用している処方もあります。

揮発することで、日焼け止め成分を肌に均一に塗布させ、さらっとしているのに密着した状態を作る、と言った具合。

揮発という意味では、オーデコロンなどもこの部類でしょう。

状態変化する処方というと、なんだか物々しいですが、ジェルが崩れて化粧水になる処方をご覧になったことはないでしょうか?

アルコールがやや多めの処方で、これもアルコールの揮発により、処方の安定性が崩れる作用を利用したもの。

残念ながら保湿力が弱い処方しか作れない欠点がありますが、使用のインパクトが強く、時々スマッシュヒットを飛ばします。

昔、コーセーのコスメデコルテやにラインナップされていたのですが、話題になっていた割に、消えるのが早かったですね・・・。でも、今でもちょこちょこ見る処方です。

透明石鹸については、綺麗に透明なタイプと、曇りガラスみたいなタイプがありますが、アルコールを必要とするのは前者のタイプ。

この辺りも詳しく説明すると長い話になるので、はしょりますが、製造工程でアルコールを使って練り上げ、型枠に流し込んで冷やしてから乾燥工程でアルコールを揮発させるというのが、基本の作り方。

原料にアルコールはあるのですが、1%以下にまで揮発させれば表示の必要なし、というルールがあるため、これらの製造工程の話は、あまり知られていません。

まあ、洗い流すものなので、肌への影響はほとんどないわけですが。

割と知られていないのは、最後の「肌への浸透を高める」という作用。

実際、有効成分を肌に浸透させる場合は、これがあるとないとではかなり効果が違ってくる成分があると聞いたことがあります。

特にアルコールはヘアトニックなどの頭皮ケア製品で多く使用されていますが、これなどはアルコールの清涼感や、ベタつき防止がメインの理由ですが、頭皮への成分浸透も大きな理由の一つとされています。

実は、この浸透がアルコールの刺激とされるものにつながっているので、ややこしい話です。

というのも、このようにいろいろメリットがあるアルコールですが、肌に合わないという人がいらっしゃるのも事実な中、その「合わない」にも、いくつかのタイプがあることは、あまり知られていません。

これが、実は本題です。

一括りに「アルコールが肌に合わない」と言いますが、大雑把な分け方ですが、ケースとしては3つくらいあるかなと思います。


ということで、長くなりましたので、詳しい話は後日に続きます。

化粧品に配合するアルコール(エタノール)のメリットとデメリットのこと(2)

さて、前回の記事では、アルコールは、なぜ化粧品に入っているのか? それは入れる理由があるからです。その理由について、入れるメリットという観点から書いてみました。…


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