石鹸の秘密について技術者目線で語ってみる【1】


ず〜〜っと、製品に茶々入れてばっかりだったので、たまには基礎的なことも書こうかなと。
タイトルはふざけてますが、意外に真面目で、多分、ほとんど誰も書いてない内容だと思います。

それは、石鹸について。

と、本題に入る前にひとくちに石鹸と言っても、実はその定義は様々です。

一般消費者目線で「石鹸」というと、「洗浄に使用する固形の物体で、ぬるま湯で濡らして、手の上で転がすと、泡が出る」くらいな感じでしょうか?
この定義から、アミノ酸石鹸とか、弱酸性石鹸とか、石鹸成分を使用していないせっけん、なんていう不思議な製品も生まれます。

この辺りも、突っ込むと面白いのだけど、グッとこらえて、今回は、化学成分としての「石鹸」について、お話ししたいと思います。

化粧品原料として「石鹸」という場合は、通常は、「脂肪酸アルカリ」をさします。例えば、「ステアリン酸ナトリウム」と言った成分。
これの場合は「ステアリン酸」が脂肪酸で、「ナトリウム」がアルカリです。

化粧品で使用する脂肪酸は、脂肪酸として名称が出る場合と、原料名がそのまま使用される場合があります。

つまり、「ラウリン酸」「オレイン酸」「ミリスチン酸」「パルミチン酸」と言った脂肪酸単体の名前で書かれる場合と、「ヤシ油脂肪酸」と言った原料そのものの名称が使用される場合です。
脂肪酸単体の名称には、そんなにバラエティがなくて、これら4種類に、先のステアリン酸を足したくらいが主なもの。

脂肪酸の名前というのは、その構造によって決まっていて、詳しくは述べませんが、分子が小さいものから大きいものまであるのですが、だいたいラウリン酸より小さくなると、匂いや泡立ちの悪さ、刺激などの理由で、あまり使用されません。
一方ステアリン酸より大きい分子になると、水に溶けないなどの理由から、これまたあまり使用されなくなるので、このくらいしかバリエーションがないわけです。

ヤシ油脂肪酸、と表記された場合は、その脂肪酸の中に、上記のような脂肪酸が複数混在していると思っていただければ良いと思います。

アルカリのほうはもっとバラエティが少なくて、現在は「Na(ナトリウム)」「K(カリウム)」「トリエタノールアミン」の3種類だけ
固形石鹸ではナトリウムが、液体石鹸ではカリウムが多用されます。
トリエタノールアミンは「中性石鹸」を作るという名目で使用されていたこともありますが、現在はほとんど見かけなくなりました。これのいろんな理由はいずれまた。

私の個人的な感想かもしれませんが、世の中には、化学的知識がないまま、こうした成分を語っている人が多く、石鹸についての化学的特性が、理解されないばかりか、誤解されているなあ、と思うのです。

まず、石鹸は、基本的にアルカリ性です。これは、弱酸である脂肪酸と、強アルカリであるナトリウムやカリウムがセットになっているので、もうアルカリ性にしかなり得ないわけです。

そういえば、話がそれますが、たまに美容ブログとかで「強酸」「強アルカリ」という言葉を見かけて、見てみるとpH3とか11くらいだったりするのですが、これは全く化学的ではありません。
化学の世界で強酸と言ったらpH1以下。濃硫酸を超えないと。
そもそもレモンでもpH3くらいですから、そんな酸は世の中にゴロゴロあるのです。
ガラス瓶以外は全て溶かしちまうぜ、くらいの酸でないと。

化粧品業界に入って、強アルカリ、という言葉を聞いた時には、ああ、指紋が消えるやつね〜、角膜がボロボロになるやつね〜、と思っていたので、液体石鹸(だいたいpH11〜12くらい)のことだと聞いてびっくりした記憶があります。
まあ、その後、マーケティングの仕事を始めたら、普通に弱酸性とか強酸性なんて単語を使ってますけどね。

石鹸がアルカリ性なので、よくない、という議論を目にすることがあるのですが、これはある意味正しく、ある意味間違っています。
というと、肌が弱酸性なので、弱酸性の方がいいに決まっている、という意見を言われてしまいがちです。
これも、ある意味正しいけれど、完全な正解ではありません。

まず、石鹸は洗い流すものなので、そのアルカリ性が、そのまま肌に残るわけではありません。
ですので、そのアルカリを、ダイレクトに論じること自体に問題があります。

もっとも、世の中には、アルカリに敏感な人というのがいらっしゃいます。また、肌の弱酸性は、皮脂に含まれる脂肪酸によって保たれていますが、これが出にくい肌の方があり、そうした人は、一度アルカリに傾いた肌が、なかなか弱酸性に戻りにくく、その場合、皮膚の常在菌のバランスが崩れてしまうという指摘があります。(反論もあります)

同様に、アルカリ性の方が、皮脂よごれなどを洗い流しやすく、清潔を保ちやすいという指摘がある一方で、洗いすぎてしまうので、乾燥を招くという指摘もあります。

割とよく耳にする誤解の一つ、というか、割と広く思われているなあと思うことに、界面活性剤より、石鹸の方がマイルド、という話があります。
しかし、こと洗浄力に関しては、石鹸の方が上だというのが、技術者の間では常識です。

アルカリ性というのも、効いています。
もちろん、脂肪酸の組成を調整することで、その辺りを調整することもできますが、やはり洗浄力は比較的強めです。

それでも、石鹸には様々なメリットがあります。次回はその辺を詳しくお話ししたいと思います。

石鹸の秘密について技術者目線で語ってみる【2】

石鹸について、というか脂肪酸石鹸について、さらっと箇条書きにでもしようかと思って書き始めたら、相変わらずの脱線続きで、さっぱり進まなかった前回。 石鹸については…


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