乾燥肌を4つのタイプに分類してみる(前編)
乾燥甚だしい季節です。とはいえ、私自身は全然乾燥肌ではなく、ましては敏感肌では全くないので、あまり実感はないのですが・・・。
一口に乾燥肌と言いますが、その原因や肌状態によっていくつかの分類ができることをご存知でしょうか。
色々な分類があるかと思いますが、私は大雑把に4タイプに分類して、それぞれどれに当てはまるかで対策のアドバイスを分けるようにしています。
4つのタイプというのは
①皮脂分泌が少ない
②皮膚内の保湿因子を作る能力が低い
③皮膚もしくは角質層が薄い
④角質が厚すぎる
という感じ。
大抵の乾燥肌は、このどれかか、複数に相当します。
もちろん例外もあって、例えば人工透析している方の肌とか、ものすごい汗をかく人とかはちょっと別のメカニズムなのですが、それはいつか必要に応じて。
まずは、順番に「①皮脂分泌が少ない」タイプから。
実は、乾燥肌というと、まずこれを思い浮かべる人が多く、かつてはこれが乾燥肌のすべての原因とされていた時代もあります。
1980年代くらいまでは、とりあえず油を塗れ、というのが乾燥肌の対策でした。
現在では、油を塗っても根本的な解決にならないということが認識されていますが、肌のタイプとして、確かに皮脂分泌が少ない肌は乾燥しやすいというのは事実かと思います。
このタイプの人は、子供の頃にニキビに悩んだことが少ないという人がほとんどです。
女性であれば、テカリなども気にならず、化粧崩れもあまりしないよう。
皮脂分泌が少ないので、あまり顔を洗う必要はありません。
ぬるま湯ですすぐくらいで十分なのですが、女性であれば化粧しているので、クレンジングが必要となり、このため乾燥してしまう傾向があります。
皮脂分泌が少ない人の特徴としては、全身の油分が不足しがちなので、当然頭皮の皮脂も少なめです。
なので、洗浄力の強いヘアシャンプーなどを使用すると、頭皮が乾燥してフケ状のものが出てしまったり、髪の毛がバサバサしてしまったり、といった現象も生じます。
冬場に足のすねが乾燥し、粉を吹いたようになるという人も多い様に思います。
実は厳密にいうと、皮脂分泌が少ないことと、「乾燥肌」には関連性は無いということになっています。
「乾燥肌」というのは、皮膚の水分保持能力が低い肌のことであり、それは角質層より下で生じていることであって、皮膚の上に油があるかどうかは、乾燥肌とは関係がない、というのが皮膚科学の専門家の説でした。
というか、90年代に登場したセラミド至上主義的な理論では、そうなっていました。
実際、皮膚の水分量を測定すると、皮膚表面に油を塗っても、水分量は増加しないというのがあって、皮膚にはセラミドが必要で、表面の皮脂は必要ない。
というよりも、酸化して皮膚に悪影響を及ぼすので、皮脂はないほうがいい、といった説明もされていました。
その後、皮膚の柔らかさや、滑らかさ、といった部分で皮脂は重要な役割を果たしていることがわかり、「皮膚の上に油を塗る」ということは見直されつつあります。
また、測定では確かに皮膚表面の油分が皮膚内の水分量に影響しないといっても、経験的に、やはりクリームなどの油分が皮膚表面に無いと、乾燥肌の人は乾燥してしまうというのがわかっていて、最近は、油分たっぷりのこってりしたクリームも見直されています。
90年代になって、皮膚の乾燥には、皮膚最外層である「角質層」の役割が大きいということがわかってきて、乾燥肌が「②皮膚内の保湿因子を作る能力が低い」ことにより、皮膚が水分を維持できないために生じている、ということが明確になってきました。
そして、これが本来の「乾燥肌」であると認知される様になってきて、今日に至ります。
化粧品、特にスキンケアを学んだことのある人ならば、角質層の水分保持メカニズムとして、「セラミド」と「アミノ酸」が重要、という話を聞いているかと思います。
もっと詳しく勉強された方なら「角質細胞間脂質」「NMF」「ラメラ構造」という言葉を学ばれているかとおもいます。
角質層は、非常に薄い膜で、層構造を形成しています。
その中では、セラミドを代表とする「脂質」つまり油分と、「天然保湿因子(ナチュラルモイスチャライジングファクター/頭文字をとってNMF)」と言われる、アミノ酸に代表される水溶性成分が、水を取り込んで「ラメラ構造」という、界面科学的に強い構造の乳化形態を構築しています。
この構造がきちんと作られていると、皮膚内の水分は抜けることがなく、また、この構造が非常に強いため、外的刺激などをきちんとシャットアウトできる様になっています。
セラミドもNMFも、皮膚の内部で様々な反応を経て作られています。
そしてそれを作る能力は、遺伝子やその他の因子によってコントロールされています(あまり正確な表現ではなくてすみません。そこを追求するとややこしくなるので、今はこの辺でご容赦ください)。
ところが、こうした製造工程がうまく稼働せず、セラミドやNMFの生産が上手くできないという肌タイプの方もいらっしゃいます。
これが「②皮膚内の保湿因子を作る能力が低い」タイプの乾燥肌で、皮膚科学の専門家が規定する、本来の乾燥肌ということになります。
アトピー性皮膚炎の方の肌は、乾燥肌の代表の様に乾燥が激しいのですが、その多くはセラミドの産生能力が低いということが知られています。
また、別の報告ではNMFを作る能力も低いということも指摘されています。
アトピー性皮膚炎については、また改めてご説明したいと思いますが、その多発し、継続する皮膚トラブルの原因の大きな一因として、この乾燥肌があり、セラミドやNMFが少ないために、皮膚のバリア機能が低いことが挙げられています。
このタイプの肌の人は、子供の頃の乾燥が非常に激しいというケースが多い様です。
アトピーの診断の一つに「耳切れ」というのがあって、これは何かというと、子供に生じるケースなのですが、耳の付け根が切れてしまって、血が出ていたり、かさぶたになっていたりという現象。
②のタイプの乾燥肌の方に話を聞くと、ひどいケースではこの現象を体験している人が多く見られます。
面白いなと思うのは、これらの方々が、「それって子供の頃は、みんなそうでしょ?」と言われること。
同様のことが、肘の内側や膝の内側、または「わき」や手首など「結節部位」にもあって、この部位は皮膚が薄い上、汗がたまりやすいため、自分の汗の刺激や、擦れによってトラブルを生じてしまう傾向がありますが、その話をすると、これまた誰でもそうでしょ?という反応が多いもの。
皮膚の水分保持能力が正常で、ラメラ構造によるバリア機能がきちんと機能していると、たとえ結節部位でもそうしたトラブルは生じないのですが。
皮膚のバリア機能の低さには、レベルがあって、上記の結節部位は比較的多めですが、ひどい場合は脇腹など、比較的皮膚の薄いところでも、同じ様な現象が生じることがあるようです。
ベルトで占めているところや、靴下やパンツのゴムの部分が痒くなるという方も、高頻度で見かけます。
とまあ、以上の2タイプが、比較的一般的な乾燥肌なわけですが、実は、皮膚の保湿機能に問題がないにもかかわらず、皮膚の構造として乾燥肌になってしまうケースが2パターン存在します。
さらっと分類して、見分け方とか、パターン別の対処法とかの説明をしようと思っていたのですが、だいぶ長くなってしまったので、続きはまた後ほど。
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