高温でも低温でも劣化リスク?化粧品の保管方法について


先日、問い合わせをいただいて、回答した内容が、ここのブログを読んでいらっしゃる方にも興味持っていただけるかなと思ったので。

お問い合わせいただいたのは、こんな感じの内容でした。

「エアコンを切って出かけると、家の中の温度が非常に高くなってしまうが、そんな高温で化粧品を保管するのはよくないと思うので、冷蔵庫で保管しても良いか?」

この質問は、毎年夏になると必ずと言っていいほど数回聞かれます。というか、聞かずに実践している人も多いようです。

そういえば、以前に美容家のお宅訪問みたいな番組で、冷蔵庫にぎっしりスキンケアを入れているというのを見たこともあります。

この質問への回答は、実は化粧品の開発技術者としての目線からは、なかなか回答しずらいものです。

なぜかというと、確かに高温で保管すると化粧品は酸化したり、変質しやすいという欠点があるのですが、かと言って冷やしすぎもまた化粧品を劣化させるリスクがあるからです。

化粧品は「冷暗所保存」というのが基本ですが、この「冷暗所」というのは、人間が生活する中での温度を想定しているので、だいたい15〜25度くらいを想定していると言われています。

冷蔵庫だと、これより冷えてしまうのですが、ここには3つのリスクが存在します。

まず第一のリスクは極端に冷えてしまう場合があるということ。

冷凍室出なくても、保管場所によっては凍結してしまう場合があります。

これは冷蔵庫の機能性や古さなども影響すると思うのですが、割と上段の方が冷えるように思います(うちの冷蔵庫が古いのか?)。

凍結する場合のリスクにはいくつかあるのですが、もっとも多いのは容器の破損です。

特にガラス容器に入った化粧水などが割れてしまったという話は稀に聞きます。

また、プラスチック容器の中にも低温に弱い素材があり、割れやすくなってしまうことがあるので、要注意です。

第二のリスクとして低温での安定性が悪い処方や、低温で極端に液性が変わってしまう処方があるということ。

私が製品開発をする場合は、低温での安定性試験もやっていて、4度くらいでの安定性を見ていたのですが、高温では大丈夫な処方が低温で分離する例は数多く見ています。

乳化が壊れて乳液が分離する例や、化粧水の中でグリセリンが分離して沈降する例などがありましたし、オイル成分が固まってしまい、遊離してしまうケースや、室温では溶けていた成分が低温で析出してしまうケースなどもありました。

また、洗顔料やクリームなどで、チューブの中で粘度が極端に高くなり、硬くなってしまうものもありました。

これらは室温に戻せば普通になるのですが、ここにも問題があります。これが第三のリスク。

技術者には「サイクルテスト」というと通じるのですが、極端な低温と室温での保管を繰り返す試験をすると、何回かやっているうちに突然分離したり、戻らなくなってしまうような処方があります。

温度を変化させることを繰り返すので「サイクル」テストというのですが、基本的に乳化系の化粧品は、このサイクルテストに弱い傾向があります。

そして、サイクルテストを実施している化粧品はあまり多くないのが現状です(メーカーによっては開発時に義務付けているところもあるようですが。大手とか)。

特に冷凍レベルまで冷えたものを室温に戻すと、分離や変質の可能性が高まります。

私の経験上は、オイル成分の多いクレンジングや複雑な乳化をしたクリーム(例えばマルチエマルジョンや複層エマルジョンなど)などは、壊れやすかった記憶があります。

とまあ、こんな具合なので、私が聞かれた時は、基本的には冷蔵庫保存はお勧めしていません。

直射日光を避けることはもちろんですが、部屋の中の涼しいところを探して、その辺りに保存するようにしてくださいという、曖昧な回答をしているのですが・・・

友人は、去年の暮れあたりに日当たりのいいマンションに引っ越したのですが、先日犬の散歩から帰って部屋の温度計を見たら48度になっていたと言っていました。

条件が揃うと50度くらいになってしまうという話を聞いてはいましたが、実際になるのだなと驚いたのと同時に、確かにその状態に化粧品を置いておくのは如何なものかとも思うわけです。

家の中で涼しい場所がない、例えばワンルームマンションなど逃げ場がない場合は、冷蔵庫への保管も選択肢になるのかもしれません。

その場合、冷えすぎないようにすることが重要です。

日立のウェブサイトを見ていると、以下のような記載がありました。

(以下抜粋。少しレイアウトを変更しています)

冷蔵庫の庫内の温度はどのくらいですか?

各室の目安の温度範囲は、以下の通りです。(R-X7300Fの場合)。

冷蔵室 約2℃~6℃
真空チルドルーム 約-1℃~+1℃
製氷室 約-20℃~-18℃
冷凍室 約-20℃~-18℃
野菜室 約3℃~7℃


※温度範囲は冷蔵庫の周囲温度約30℃、温度設定を「中」設定で、食品を入れずにドアを閉め、安定したときの温度です。
※R-X7300Fの場合ですが、機種により異なる場合があります。

詳しくは、取扱説明書をご覧ください。
※冷蔵庫は食品を保存していただく場所によっても温度が異なる場合があります。冷蔵庫の冷気の吹き出し口などは温度が低い傾向にあり、逆にドア側は温度が高い傾向にあります。
※食品、食材の置きかたによっては、冷気の流れが変わるため冷えやすくなったり、冷えにくく なったりする場合があります。

機種によっても異なるようですが、私が以前に聞いた話では、ドアポケットの部分がもっとも温度が高く、10度くらいあると聞いたことがあります。

もっとも、それもずいぶん前の話なので、今は機能性が上がって、そこまで庫内で温度差はないのかもしれません。

上記のデータを見ていると、野菜室が一番無難な気がします。

冷蔵庫保存する場合のコツとしては、なるべく温度変化させないように使うということでしょうか。

室温に戻して使い、また冷やす、と言った使い方ではなく、冷蔵庫保存するのであれば、ずっとそこに置いておくくらいの覚悟で。サイクルテストにならないように気をつけていただくのがいいと思います。

ただし、一部のクリームやジェルなどでは、成分の一部が析出してしまうケースがあります。

その場合、その成分が肌にザリザリ当たって傷つけてしまうことがあるので、十分に注意してください。パラベンや塩類が析出しやすかった記憶があります。

冷蔵庫保存することで、ものすごく気を使っているつもりが、逆に化粧品を過酷な環境に置いてしまうこともあるということを理解いただけるとありがたいです。

保管に気を使っていただくことは嬉しいのですけどね。


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